災害時市民協力
― 平時の協働が、非常時に機能する地域構造をつくる ―
災害時市民協力とは
災害時市民協力とは、発災後に急ごしらえで人を集めるのではなく、平時から築かれてきた関係性と協働の基盤が、非常時に機能する状態を指します。
樋口は、災害対応を「特別な有志の行動」ではなく、地域の協働エコシステムが試される局面として捉えています。
能登半島地震における実践
能登半島地震発災後、樋口が代表を務める一般社団法人ばいにゃこ村は、中滑川複合施設メリカを後方支援拠点として、被災地支援活動を開始しました。
この取り組みには、滑川市長自らが現場に参加し、市民とともに支援活動を行いました。
自治体トップが市民主体の支援に加わる姿は、全国的にも注目を集め、「行政と市民が対等な立場で協力する災害対応」の一つのモデルとなりました。
行政と連携した市民協力体制
被災地支援は、市民の自発性に任せるだけでは持続しません。
本取り組みでは、滑川市と連携しながら、
- 物資の集約と仕分け
- ボランティアの受け入れ・役割整理
- 情報共有と安全管理
- 支援先との調整
といった体制を構築しました。
その結果、延べ500人以上の市民ボランティアが継続的に参加し、被災地支援活動は発災直後から現在に至るまで途切れることなく続いています。
市民協力が生んだ広がり
能登半島地震を通じて、中滑川複合施設メリカに新たな被災地支援団体が誕生しました。
これは、中滑川複合施設メリカにおける拠点モデルから市民協力の経験が形になった結果だと捉えています。
メリカを起点に、市民が主体となって支援に関わる文化をより広域に広げるべきフェーズに入りました。
継続的支援と派生プロジェクト
本取り組みの特徴は、被災地支援が 単発の緊急対応で終わらなかった点にあります。
支援活動を通じて生まれた関係性から、
- 子ども食堂
- 子どもたちの心のケア事業
- 地域福祉に関わる新たなプロジェクト
などが派生的に立ち上がりました。
災害時の市民協力が、平時の地域福祉や子ども支援へと接続され、協働が別の分野へ展開していく循環が生まれています。
災害時市民協力から得られた示唆
本実践から、以下の示唆が得られています。
- 平時の協働基盤は、非常時に即座に機能する
- 行政が市民協力に加わることで、信頼と参加が加速する
- 市民協力は、災害後も地域の力として残る
- 災害対応は、地域福祉や教育へと接続し得る
これらは、災害対応を「一過性の支援」に終わらせないための重要な視点です。
協働エコシステムとの関係
災害時市民協力は、協働エコシステムの一部として位置づけられます。
- 平時:関わりシロをひらき、協働を育てる
- 非常時:その関係性が即座に立ち上がる
- 復旧後:協働が新たな地域プロジェクトへ展開する
この循環こそが、地域のレジリエンスを高める要素だと考えています。
災害時市民協力が目指すもの
本取り組みの目的は、被災時に「頑張れる人」を増やすことではありません。
- 誰もが無理のない形で関われる
- 行政と市民が役割を分担できる
- 支援が継続し、次につながる
そうした状態を、地域の中に組み込むことです。
災害時市民協力とは、協働が試され、そして鍛えられる場。
その経験が、地域の未来を支えています。