フィールド活用の考え方
― 地域そのものを学習環境としてひらく ―
フィールド活用とは
本ページでいうフィールド活用とは、地域を「調査対象」や「実習の場」として一時的に使うのではなく、学びと実践が循環する学習環境として位置づけることを指します。
地域の行政、企業、NPO、市民団体、公共施設などを分断された存在としてではなく、相互に関係し合う学びのフィールドとして捉え直します。
なぜフィールド活用が必要なのか
教室内の学びだけでは、協働の複雑さや地域のリアリティは理解しきれません。
一方で、現場に入るだけでは学びが散発的になり、経験が構造化されないまま終わってしまいます。
フィールド活用は、実践と学びを意図的につなぐ設計行為です。
樋口のフィールド活用の特徴
1. 地域を「教材」ではなく「共創の場」と捉える
地域課題を一方的に分析するのではなく、地域の人々とともに考え、動くことを前提とします。
2. 複数主体を横断的に接続する
行政、企業、NPO、市民団体など、異なる立場の主体が交差する場をフィールドとして設定します。
3. 関わり方の選択肢を残す
短期参加、継続参加、役割担当など、関与の深さを選べる構造を設計します。
主なフィールドの例
これまでに活用してきたフィールドには、以下のようなものがあります。
- 公共施設・地域拠点
- 地域イベント・マルシェ
- 行政施策や協働事業
- 地域産業(農業・漁業・製造・サービス)
- 災害時・復旧期の支援活動
これらを単独で扱うのではなく、横断的に接続することを重視しています。
フィールド活用と実践プログラムの接続
フィールド活用は、フィールドワークや実践プログラムと密接に結びついています。
- 地域フィールドワーク
- 地域課題解決型プログラム
- 協働プロジェクト実習
- インターンシップ・滞在型プログラム
いずれも、フィールドの特性に応じて設計され、学びが段階的に深まる構造を持っています。
フィールドを学びに変える設計
フィールドを単なる「現場体験」で終わらせないために、以下の点を意識しています。
- 事前に視点と問いを共有する
- 現場での役割と立場を明確にする
- 実践後に振り返りの場を設ける
- 学びを言語化・構造化する
これにより、経験が他の文脈にも転用できる学びへと昇華されます。
行政・地域との関係性
フィールド活用は、行政や地域にとっても一方的な負担にならないよう設計します。
- 調査される側にならない
- 学習者だけが得をしない
- 地域側にも価値が還元される
この関係性の設計が、継続的なフィールド提供と協働を可能にします。
フィールド活用が目指す状態
フィールド活用のゴールは、「学びのために地域を使う」ことではありません。
- 地域に学びが入り
- 学びが地域の実践を更新し
- 実践が次の学びを生む
この循環を地域の中につくることです。
地域そのものが、学び続けるフィールドになる。
それが、フィールド活用の目指す姿です。