協働エコシステム実証実験|拠点型モデル

― 拠点が協働エコシステムの要となる可能性の検証 ―


拠点型モデルとは

拠点型モデルは、公共施設や地域拠点が協働エコシステムの中核として機能し得るかを検証する実証実験です。

人物型モデルが「個人」を起点とするのに対し、本モデルでは 「場(拠点)」を起点に、協働がどのように生まれ、拡張していくか に焦点を当てています。

実証の舞台は、2022年11月に完成した 中滑川複合施設メリカ です。


実証の背景:公共施設を協働の起点にする

中滑川複合施設メリカは、地方創生拠点整備事業として整備され、来館者数 年間1万人 をKPIとして設定されていました。

樋口が代表を務める 一般社団法人ばいにゃこ村 が指定管理者として採択され、本実証実験がスタートしました。

本モデルでは、公共施設を「利用される場所」ではなく、人と人、活動と活動が交差する協働の起点として再設計することを目的としました。


実践の方針:挑戦を増やし、関わりシロを広げる

拠点型モデルの中核となる考え方は、挑戦を増やすことで、関わりシロを増やす という点にあります。
メリカでは、

  • マルシェ・イベント
  • 子育て支援
  • 起業支援
  • 農業支援・商品開発
  • 情報発信
  • 学生支援
  • ショートドラマ制作

など、分野を限定せず多様な事業や挑戦を立ち上げてきました。

一つひとつの取り組みが、「参加できる」「手伝える」「関われる」余地を生み、協働の入口として機能していきました。


実証結果:来館者数と協働の集積

こうした実践を重ねた結果、来館者数は当初KPIであった1万人を大きく超え、年間20万人が集まる拠点へと成長しました。
重要なのは、来館者数の増加そのものではなく、

  • 多様な主体が自然に集まる状態が生まれたこと
  • 行政と市民をつなぐ中間拠点として機能したこと
  • 富山県全域から地域プレイヤーが集まる場になったこと

です。

その結果、
「富山県ではじめてイベントをするならメリカ」
「まちづくりの相談ならばいにゃこ村」
と呼ばれる状態が形成されました。


非常時における検証:災害時の協働拠点機能

拠点型モデルは、非常時においても協働エコシステムが機能するか という点でも検証されました。

能登半島地震の際には、メリカを被災地支援の後方拠点とし、延べ500人以上の市民ボランティアが集結。

県内外から届いた支援物資を集約し、災害被害の大きかった奥能登地域へ3万食を超える炊き出し支援につながりました。
平時に築かれた関係性と関わりシロが、非常時にも即座に機能することが確認されました。


拠点型モデルから得られた示唆

本実証から、以下の示唆が得られています。

  • 拠点は「人を集める装置」ではなく「協働を生む装置」になり得る
  • 挑戦の数が関わりシロを拡張する
  • 平時の協働基盤は、非常時にも転用可能である
  • 中間団体が拠点を運営することで、行政と市民の接続が円滑になる

これらの示唆は、地域型・県内型モデルへ展開する際の重要な基盤となっています。


他モデルとの関係性

拠点型モデルは、人物型モデルで検証した「個人を起点とした協働」を、場(拠点)にスケールさせたモデルです。

  • 人物型モデル:個人
  • 拠点型モデル:公共施設・地域拠点
  • 滑川市モデル:地域全体
  • 富山県モデル:県域

人物と拠点が相互に作用することで、協働エコシステムがより安定的に機能することが確認されています。


まとめ

拠点型モデルは、公共施設が単なる管理対象ではなく、協働が生まれ続ける中核拠点となり得ることを示しました。

挑戦をひらき、関わりシロを増やし、協働を育てる。
その実践の蓄積が、拠点型モデルの成果です。


▶ 他の実証モデルを見る

  • 人物型モデル
  • 滑川市モデル(実装中)
  • 富山県モデル(構想)

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